2014年05月01日

話題の「戦略PR」「インバウンドマーケティング」議論について考えてみた

久々のブログ投稿です。きっかけはこの記事

自分的には少し乗り遅れてしまっていたものの、昨今"戦略PR"や"インバウンドマーケティング"という概念について業界内で熱い議論が交わされていたのは知っていて、その1つの答えとも思えたのが上記の記事でした。

そんな記事を読みながら、ネット広告黎明期から事業会社と広告代理店、それも大小様々な規模の企業と関わってきた自分なりの観点でメモ書きとしてここに記しておこうと思ったのがこの記事です。

※ちなみにこの対談のきっかけとなったとされる元記事の件については、著書も読ませて頂いたところ著書内では本質論が書かれており、あくまで記事のタイトル上の問題だったのかな、というのと、いずれにせよこの記事は特定個人についての意見ではなく、昨今のマーケティングの潮流について書いたものです。


さて結論(自身の感想)から先に書くと、


■大前提その1:
クライアントの課題設定や、その課題に対しての統合的な戦略立案は、いずれの場合にせよ最初に行われるべきものである。

→戦略PRは「空気作り」という点で、市場や生活者の気持ちやニーズ(潜在的/顕在的)を始めから向いている(インサイトファースト)。そのため、その「手法」ばかりがクローズアップされ、戦略PRブームや、そのパッケージ販売ともいえる状況が起こったが、ここで特に学ぶべきことは「インサイトファースト」がより重視されるようになった時代である、ということ。


■大前提その2:
生活者の購買行動は多様化しており、その様々な段階において、それぞれ異なったコンタクトポイントやコミュニケーションが求められるようになった(細分化)。AIDMAやAISASでは括りきれない時代。伴ってジャーニーマップなどが注目されてきており、「コンテンツファースト」という概念が注目されている。

→そのため、その様々な段階に応じた企業・サービス側の受け口として「コンテンツマーケティング」が提唱されている。これは狭くとらえると、様々なニーズ毎の検索ワード設定(ここで狭義の戦略PR〜戦略キーワードの拡散〜も絡める場合もある)→検索→SEM→LPO→見込客獲得、となるが、本来はもっと広く、かつ昔からあるもの。

上記の記事内にも記述があるが、企業発信のブランデッドコンテンツ(ブランデッドエンターテイメント)は古くからあるし、トリプルメディア時代にも「自社メディアを持つべき」という類似の議論もあった。ここで特に学ぶべきことは、生活者の購買行動=購買心理・購買過程に応じたコミュニケーションをとることが見直され、かつその細分化にも対応が必要である、ということ。


■上記2つのまとめ
「戦略PR」や「インバウンドマーケティング」が提唱していることは、ある一方では、マーケティングプロセスの中で根本的な議論である。

しかし、戦略PRの議論でいえば「企業からの情報発信だけではモノは売れない」という状況、インバウンドマーケティングの議論でいえば「購買行動の細分化」に伴い、より個々に対応したコミュニケーション必要な状況・・・こういった時代背景だった。

そこに、この2つのマーケティングアプローチが登場したことで、本来であれば「マーケティングの基本プロセスを、現代にあわせてチューニングし昇華する」といった受け止められ方をされるべきだったものが、キーワードやプロセスの目新しい部分(目新しく見える部分)だけに反応したサービスや事業者がうまれたことで、ややこしい状況になってしまったのかと。

* * *

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■閑話休題
ここで、即席極まりないけれど付箋でネット広告黎明期からの「流行ワード」をざっくりとプロットしてみました。もちろん全てではないですが(見直してみたら「ロングテール」や、直近でいうと「ネイティブアド」が入ってない・・)、この図を見ながら、時系列で振り返ってみることにしました。

○ネット広告黎明期
テレビCM崩壊!といったような過激な報道が飛び交った時代。海外の○○社はマス広告予算を削ってネット広告にシフトした、といった記事が多く見られました。

当時の広告の流れといえば、バナー広告。何と言ってもマス広告よりもはるかに安く、かつ効果が数値化されるので、事業会社側としては積極的に取り入れたかった。その後、検索連動バナーやリスティング広告の台頭により、より「購買に繋がり易い」ネット広告に予算がシフト。結果としてROIは向上したものの、売上自体が縮小してしまったという例もしばしば。

○クロスメディア時代
ネット広告傾倒では規模が縮小してしまう。そこで、テレビCMに「○○と検索」としたり、リアルイベントとネットの連携、はたまた携帯(ガラケー)のQRコードを用いたネット誘導など、「クロスメディア」「マス連動」といった流れが出てきました。立体的な企画が多く生まれたのもこの頃。

○Web2.0時代
CGM(Consumer Generated Media:当時は主にblogを指す)の発達により、ネット上に誰でも情報を発信でき、またWikipediaのように、ユーザーが「集合知」と「性善説」に基づいて情報を正しいものにする、といったものの考え方も発生。

そこに付随するように、「口コミ」によりモノが売れる、という風潮が生まれてきます(いわゆるPPP〜Pay Per Post〜やらせのブログ記事、の始まり)。この風潮はどんどん強まり、良い方向では「ユーザー参加型コンテンツ」が生まれる一方、他方では前述のやらせも発生。将来に向けての課題となりました。

○ソーシャルメディアマーケティング時
そのような中、例えば企業もブログをもって生活者とコミュニケーションしましょう、とか、twitterやfacebookの伸長で更に発展した生活者の情報発信や口コミに対して、マーケティングを仕掛けよう、という流れが起きてきます。

そこから派生して、「トリプルメディアマーケティング」「エンゲージメント」といった言葉が生まれ、より統合的かつ包括的に、企業と生活者がコミュニケーションしていく必要性が生じてきました。

○マルチデバイス時代
こうした流れと並行して、スマートフォンの台頭と市場拡大も、業界に大きな変化をもたらします。即ち、より多くの人〜これまでPCを持っていなかった人〜も、インターネットに接触するようになる、従来のネットユーザーも、生活の中でのネット接点が増える、またネットショッピング(EC)もより身近になる・・といったように、です。

こうして圧倒的に拡大していくネット環境の中で、一方ではビッグデータ時代〜大量のデータに基づく広告最適化(DSP/DMP)やCRMなど〜を迎え、ネット業界に統計の専門家が流入してきたりと、人材面でも変化のタイミングとなっています。

* * *

■事業会社の視点から
ここで、事業会社としての視点でこれらのトレンドを見直してみると、
・ネット広告はROI良い、効果測定もできる
 ↓
・とはいえマス広告も必要なので、ネットと連動させよう
 ↓
・口コミによる購入が増えているからそこに仕掛けよう(コストは更に安い)
 ↓
・ソーシャルメディアが伸びているからそこに入り込もう(同じくコストは安い)
 ↓
・(狭義の)戦略PRで、お金をかけずにマス露出しよう(考え方として間違っているのと、マス衰退といわれているのにマスに露出しようという考え方もちょっと不思議:実際にはマスの波及力はまだ衰えていない、ということの証明にもなりますね)
 ↓
・(狭義の)インバウンドマーケティングで、コンテンツを量産して機会損失をなくそう
 ↓
(今後は・・??)

と、なんだかどんどんよく分からない方向にいっている気がします。もちろんこれは「バーチャルな」事業会社の話で、全てがそうだとも思いませんし、実際にはそのようなことは少ないのかもしれない。

ただ「ROI改善」や、「海外では既に○○」といった触れ文句で営業活動を行う、その時々のトレンド(バズワード)を独自に解釈したサービスが生まれては消えて行っているのも事実で、それらを鵜呑みにしてしまった事業会社は少なからずあるのではないでしょうか。


■最後に
このように書いてきましたが、「ちゃんとした」事業会社のマーケターや代理店・媒体には、このような話は当てはまらないと思っています。

すなわち、それこそIMC(Integrated Marketing Communication:統合マーケティングコミュニケーション)を考えるうえで、まず生活者のインサイトを重視し、課題を設定。そのうえで、個々のインサイトに受け皿が必要であればそこにコンテンツを設ける、もしくは普段からブランディングの観点でコンテンツを提供し、生活者とコミュニケーションする。

またマーケティング担当者は、いずれにせよ企業やサービスが発信するメッセージの統一化のために、社内のステークホルダーに対して様々な調整(舵取り)をすることになります。

なぜなら、AMA(アメリカマーケティング協会)が「マーケティング」というものを定義し、改訂してきた背景には、例えば一方では看板でAというメッセージが語られ、他方では店頭でBという接客がなされている。それを一気通貫させよう、という意思があった筈だからです。

1960年版
「マーケティングとは、財とサービスの流れを、生産者から消費者または使用者に方向づけるビジネス諸活動の遂行である」


1985年版
「マーケティングは、個人及び組織の目標を達成させるような交換を創造するため、アイデア・財・サービスの概念形成、価格・販売促進・流通を計画実行させるプロセスである。」



この定義はその後も時代とともに改訂されていますが、今日話題になっている、本投稿のタイトルとした内容についての原点はこの2つにあるのでは、と思います。



※非常にざっくりと勢いで書いてしまったので、誤認などがあればご指摘いただけますと幸いです。

  

Posted by funkaholic at 13:20Comments(0)TrackBack(0)