2010年09月09日

「ECの未来を語る」座談会レポート(1)

すっかりレポートが遅くなってしまいましたが・・去る8/19に、北欧雑貨のECクラシコム社長の青木耕平さん※と初めてお会いしてきました。
※twitter上で自分の「ECサイト」「お客さま主義」関連のtweetをよく拾って頂き、逆に自分もまたよく拾わせて頂いていたので、「想い」が似ているんだろうな、と思っていましたが、お会いしたところ実際イメージ通りのお方でした!

ちなみに今回はセミナーや会食などではなく、「ECの未来について考える」といったテーマの座談会に傍聴者として参加してきたんですが、何と参加者は自分が長年ECのマーケターという立場から「ネットビジネスにおけるお客さま主義」の考え方※について勉強させて頂いていたsmashmedia河野さんと、同じくtwitter上で気になっていた、「組織論とお客さま主義のジレンマ(これ、事業会社の中の人ならみんな悩む課題のはず)」などについて興味深いブログ記事を書かれているフジイユウジさんという嬉しいメンバー。

※河野さんはコールセンターの現場や事業運営側の立場(=中の人)のご経験があるため、同様にアパレルやコールセンターの現場を経てECのオンラインマーケターに転身した自分としては「ECサイト運営ってこういう事あるよね」「ECサイトってそもそも『ネット』である前に『商い』なんだよね」などの「中の人」目線ならではの問題提起に非常に感銘を受けていました。もちろん「オンラインマーケティング×ECサイト運営×お客さま主義」という「ビジネス全般」を視野に入れた考え方も然り。


さて。今回のレポートでは、まず座談会から気になった意見を幾つか抜粋し(抜粋の都合上、一部文章のつながりなどを編集しています)、最後に自分の感想を書いておきます。※原文=完全なメモは後ろにつけておきます。

なお内容が非常に濃かったため、前編の今回は主に「事業運営の視点」から、「そもそもECサイトとは?」議論にフォーカスしています(後編では「ECサイトにおける顧客とのコミュニケーション」についてまとめる予定です)。

* * *

<以下、座談会から抜粋>

K:河野さん
A:青木さん
F:フジイさん

■はじめに:座談会開催のきっかけ
A:
・なぜECについて話したかったか。そういう場はあるが、同業では戦術的な話になってしまい、マーケターやエンジニアと話すと技術論になる。そこで現場の立場で藤井さんと話したかった。河野さんも顧問なので関わって欲しかった。ECがこうあって欲しい、のヒントがあるのではないか。クラシコムは年商1億に届かない程度。河野さんはBOOKOFF。大小さまざまな立場で共有したい。



■集客について
F:
・自分が関わっているECは実店舗がある。「ここがECはじめたのか」でお客さんが着いてしまう。ゼロベースで始めた青木さんが広告を打たなかったのがすごい。でも自分も看板以外で、リスティングはギリギリまでガマンした。
・店舗に来れない人のためにECを始めた。SEOはもちろんやっていた。ECはSEOがうまくいきやすい(品番とかでLPが山ほどあるから)。

K:
・BOOKOFFの話。在庫僅少のものと大量にあるもののマーケティングは違う。1点ものはお金のかかる広告をやってもムダ。売り切れのページに誘導するだけ。クラシコムはメルマガでうまくいった。リスティングやるなら在庫連動しないとダメ。


■理想のECとは
F:
・そもそも「通信販売」なのでは。通信販売には歴史がある。もっとプリミティブに言えば「商い」である。物流は進化したが、それ以外はそこまで変わっていないのではないか??・深夜空いていなかったり、距離が離れていたり。そういったGAPをネットで埋めている(※今後のECを考えた時に、決済・物流の進化はあるだろう)。

A:
・昔アメリカでカタログ通販が生まれた頃から、通販で売れやすいものは変わっていない。健康食品、衣料品、食品とか。ところが最近はEC=バーチャルなお店となり、通販には向かない商品が売れている傾向も(配送が困難だったり)。

K:
Amazonが宝石を扱ったからボロ儲け、は△。一番儲かるのは送料(or儲かるのは粗利が高いもの)。
ECをキチンと定義する必要がある。距離/時間のGAPを埋めるだけなのはECではない、単なるネット「通販」。本屋の取り寄せは(客注)素晴らしいが、取りにいく手間がある。これを一般消費者に解放するのがネット書店の定義。ニッチなものにまで注文が出せるからこそlongtail。

F:
ECは店舗より安くて当然でしょ?と思われているが、実際は維持費が高い。サポートを増員したくてもコストがない。製造のグローバル化により粗利が高くなれば、ようやく成り立つ。


■ECに「楽しさ」はあるのか??「自動販売機型」の進化
K:
自分はドンキホーテは嫌い。家電量販店も大半の人にとっては楽しみではない。買う事が目的の人は「買えないこと(見つからない、遅いとか)=ストレス」求めているのは高機能の自動販売機。一方で目的が曖昧な人は店の回遊を楽しめる。※「自分がやりたいこと(事業者都合)」だけをやっても失敗する。

F:
Amazonが怖いのは、決済、倉庫、物流すら解放して、モール化が進んでいる。楽天と圧倒的に違うのは、この場合、消費者が「Amazonで買ったと思う事」。近未来はGoogleのチェックアウト機能。Googleで検索してGoogleで買う。それこそ自動販売機でよい。GoogleでなくてもAmazonでもいい。



<ここだけ自分の考え>
買い物だけをしたいターゲットにとって、自動販売機型のECは間違いなく成長する。だがそれ以外にもターゲットや市場はある。クラシコムさんやウチの場合の「近未来のEC」は「生活や新しい価値観の提案(=メディア化)」ではないか??

→市場がまだ狭い場合は、そもそも動機が強い人向けのサイトでも、楽しさを伝える啓蒙は必要なのでは??(自動販売機としての機能の追及と、啓蒙=市場拡大コンテンツの共存)

※クラシコムさんでいえばそもそも扱っている商品を買って、「フィット」する暮らしを目指す、といったような「生活の提案」とか/ウチで言えば海外個人手配旅行(⇔パッケージツアー)の楽しさの啓蒙や、逆に初心者の不安を払拭するようなコンテンツ。



■最後に&問題提起
K:
「儲かるEC」の話。インターネットで誰でもお店を持てるようになった。そういう人たち(小さくても、ニッチな良い商品を扱っている人たち)が食べられるようになることが大事。皆が何億、という話ではない。本来、ECの魅力はそこ(誰でもお店を持てる)だったはず。



これって、シンプルだけど究極的な話ですよね・・と、抜粋だけでも長くなってしまいましたが、今回感じたのは「ECは岐路に立たされている」ということ。昔「Googlezon(懐かしいですね)」という未来の予言動画がありましたが、あながち間違っていない。そんな中で、MECEな区分けではないですが「指名買い」「価格コンシャスな層」「コモディティ」などは、確実に「自動販売機型のEC」に向かっていくと思うんです。

しかしその一方で、「現場(売場)」出身のECのマーケターとしては、やはり買い物に「楽しさ」も提供したい。そして、その方法はきっと色々あるはず。

○まだ市場が狭い商品、サービスであれば、まずECサイト上での啓蒙による市場拡大が必要(お金があればマス広告や統合PR戦略で市場を創れるのかもしれないけど)

○価格コンシャスな商品、サービス(特に価格破壊が進みすぎているもの)に対し、価格以外の価値や選択基準を説明する(「海外格安航空券」なんてまさにそうですね)

○頻繁に買うものでなければ、サイトに「遊びに来てもらって(もしくはメルマガでも)」ブランド接点を維持する。そこでの「楽しさ」は商品の入れ替えだけでなく、読んでいて楽しい、ためになるスタッフブログや、それが難しければいっそコンテンツ借りたりしてメディア化(極論、日替わりの4コマ漫画とかでもいいと思ってます)する、でも良いのでは


* * *

【ここで問題提起】「ネット通販」と「EC」は異なるものになる??
「ネット通販」と「EC」に違いがあるとしたら、前者はあくまで手段(チャネル)を指した用語で、後者は「E:ネット上の」「Commerce:交流・交易※」。であれば、個人的にはECの未来って、「自動販売機型」=「ネット『通販』」と、「何かしらの楽しみや交流があり、購入もできるサイト」=「EC(今の定義より狭義)」に分かれて行くんじゃないかなぁ、と思うわけです。

※実は「Commerce」の「com」はcommunity,company, communicate等に見られるように、「一体化する・参加する」とか「分かち合う」という意味を持っています(遡るとラテン語の「communio」がそもそもの語源らしいです)。そこに+「merer(=ラテン語で「稼ぐ」)」で「commerce」。そう考えると、何かしらの交流があって、双方に利益がある(サイト側は販売による利益、消費者は商品を買うという「体験」や、それに付随する情報、日常のコミュニケーション)などがあってこそ、「e-commerce」なんじゃないかと。


ただ・・「顧客とコミュニケーション」する、「情報を豊富にする」というのは、小さな事業体ではなかなかできない。でも(ちょっと飛躍しますが)インターネットってパソコン通信の時代から、「お互い助け合い、相互補完する」ものだったはずです(SNSの原型)。そう考えると、小さな事業者であっても、まさに今日で言うところのソーシャルメディアと上手に接し、ネット上の集合知の力を借りることで、自分たちだけではできない「コミュニケーション※」を実現することもできるのではないかなぁ、と最近考えています。


※この「ECにおける顧客とのコミュニケーション」は非常に深い話になりそうなので、あらためて後編としてまとめたいと思います。












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Posted by funkaholic at 18:43Comments(0)TrackBack(0)