2010年12月31日

「公私混同」ソーシャルメディア利用のメリット・デメリット

2010年はtwitterが大ブレイクし、その中で、個人が、個人でありながら仕事用途でソーシャルメディアを使うケースも、ブログ→SNSを経てtwitterで大きく拡大しました。ところがこのような流れのなかでよく耳にしたのが、「ソーシャルメディアのアカウントを仕事とプライベートで分けるか否か」という議論。これは「仕事/プライベート」「分ける/分けない」といった2分法では(それぞれの言葉の定義が広いため)なかなか話が難しくなってきます。なのでここで双方のメリット・デメリットを少し整理してみようかと思います。


ソーシャルメディアの「仕事利用」。その目的や具体的な用途は以下のようなものでしょうか。



  • 個人として情報や意見を発信し、メディア(媒体=CGM)となる

  • 異業種交流会、勉強会、セミナーなど「リアルの場」で知り合ったと、ビジネスのスタンスで交流する/関係性を強める

  • ネット上での共通の趣味関心などから、非リアルでありながら交流する/関係性を強める


※ここでの「仕事用途」からは企業の公式アカウントや「中の人」など、企業としてのソーシャルメディア利用は除きます(この場合は完全に個人ではなく企業の1スタッフとしての立場だからです)。


一方、当然ながらプライベートでの人間関係の維持/交流/強化を目的としてソーシャルメディアを利用する場合もあります。twitterで言えば、@によるフォロワー同士での複数人での会話(=ビッグチャット)などがその代表例でしょう。


ここで、前述の議論について、メリットとデメリットを書き出してみます。

■メリット
・急に話は大きくなりますが・・社会学の研究対象でもある、第32代アメリカ大統領のフランクリン・ルーズベルトがとった「炉辺談話(fireside chats)※」のように、仕事用途での情報発信を主体とする人が、趣味や私生活、時には感情的な部分を見せることで、そこに「人間性」が垣間見え、関係性が強化される(と言うと大袈裟ですが、つまりは普通の「人対人」のコミュニケーションに近くなる)。
※当時の最新メディアであるラジオを通じて国民との対話を重視し、自身の私生活などまでも話題とすることで国民の支持を集め、アメリカ政治史上で唯一四選されたというエピソード(出展:Wikipedia)

・読み手にとって普段は接しない情報を発信することで、情報の「選択的接触」を崩し、新たな気付きを与える可能性がある。


■デメリット
・読み手(ブログ読者やSNSのフレンド、twitterのフォロワー)にとって、ブログであればカテゴリ分け、SNSであれば日記のタイトルなどでおおよそ内容を判別し、「読む/読まない」を判断することもできるが、しかしtwitterの場合、複数のジャンルの情報がタイムライン流れてくることでタイムラインが埋もれる事をを嫌う人もいる
・そもそも読み手が特定の情報のみ~仕事もしくはプライベートのどちらか~を望んでいる場合、その双方を強制的に発信してしまう


* * *

今回、この議論について結論をまとめるつもりはありません。ただ、上記のように整理をしてみようとしたところで、実は上記の「プライベート」にも、以下のような「幅」があり、それをどこまで「プライベート」と呼ぶかは人によっても違うし、また同じ内容であっても、それが許される人とそうでない人、許される場合とそうでない場合があると感じています。


<様々な「プライベート」>



  • 趣味に関する情報収集や、それに基づく発言

  • 個人の私生活(食事や出かけ先に関する写真投稿や発言)

  • 仕事や生活に関するの愚痴

  • (主にリアルの)特定個人間でしか分からない会話

  • 親しい友人にのみ言うべきような話

  • 相手を特定しない、たんなる“つぶやき”

  • 酔っ払った勢いでの発言



例えば、ブログで生計を立てているような人(当然、読者も沢山いて「メディア」となっています)が、極めて限定的な人にしか分からない内容(しかもリアルでの人間関係に関すること)などを発信したとします。この場合を、この例だけで「良し悪し」を決められるでしょうか。読み手によっては「こういう話はどこか別のところでやってくれ」と思うかもしれません。別の人は「この人もこういう側面があるんだ」と感じ、よりファンになるかもしれません。



また、こんなケースもあると思います。

■メリット:その他のケース
ちなみに・・また違った切り口として、(自分の例になってしまいますが)自分はマーケターとダンサー、2つの立場を混同して利用しています(後者は仕事とも趣味とも、またはプライベートとも取れます)。これはセルフブランディングに非常に役立っていて、ネット上での交流が主である方にリアルの場でお会いした際、「あ、ダンサーの方ですよね」と覚えていて頂けることが多い。そんなケースもあったりします。


■デメリット:その他のケース
こうした「仕事用途」というのは非常に線引きが曖昧です。また業務でこうした領域に深く関わっていない人にとっては、非常に「分かりにくい世界」でもあります(「分からない方が悪い」とは一切思っておらず「どちらかといえば分かりにくいほうがよくない」とは思っています)。
そのため、例えばリアルの人間の友人同士、恋人同士などで悩み相談やケンカなどをしたすぐ後に、ソーシャルメディア上でまったく別の顔で発言をしていたりするのを見て、相手の気分を害してしまうこともあります(自分も経験があり、その際にはリアルの世界できちんとお詫びをしましたが・・)。
※そもそも「ソーシャルメディア」も色々あるので、個々のソーシャルメディアごとに話は変わってくるかもしえません。


* * *

と書いてきて、やはり結論を出すつもりはないのですが、1つだけ「やってはいけない」と思うのは、このように曖昧な「場」であるが故に、受け手・読み手たる人は発信者の発言を様々な解釈で受け取ります。そして様々な反応を返してくれます。また、発信者たる皆さんも、「公」「私」を、自分なりに明確に線引きできているかというと、それも非常に難しい。

そんな状況の中で発信者となる人は、(明確なガイドラインでも明示していない限りは:いかなる利用法にせよ個人としてのソーシャルメディア利用でそこまでやる必要はないと思っていますが)「自分はこのように使っているから、このようなRTは困る」といったような事を言ってはいけない。そもそも、ネット上で世界に公開されている情報である訳ですし、そこに表現されていない部分を第3者がコメント、リプライやRTなどで補足したとしても、それはリアルのコミュニケーションでも起こりうる(むしろリアルでこそ起こる)、極めて自然な行為だからです。



以上、まとまりのない投稿になってしまいましたが・・先ほど自分のtweetに対して幾つかご意見を頂いたので、140文字では表現できない部分も含め、ざーっと書き出してみました。


ちなみに以下は極めて私見になりますが、ただ結局ソーシャルメディアは「人そのもの」。なので用途を分けるかという議論は、リアルの世界での会話を「相手によって区別するか」とも近いものがあり、それもまたケースバイケースで、先ほど述べた「意見や関心事に幅がある/相手に合わせて空気を読める」、「直感的な発言が良い/何でもかんでも話しすぎる」・・など、同様の「賛否両論」があるのかなと思います。

つまり、ソーシャルメディア上のコミュニケーション力は当然、属人的なものだし、それはリアルのコミュニケーション力と直結する。結局・・まずはリアルでのコミュニケーション力を磨きなさい、ということなのかな、と自分では思ってしまいました。


2010年ももうすぐ終わりですが・・この1年、自分自身にとっては、マーケティング界においてはtwitterが、ダンサーとしてはSNSやYouTubeが、大きく人間関係を広げてくれました。正にソーシャルメディアに助けられた1年。とはいえ今回書いたような課題は自分自身でも感じているので、来年以降も、引き続き考えていこうと思っています。

  

Posted by funkaholic at 20:10Comments(0)TrackBack(0)

2010年12月22日

「オウンド・ソーシャルメディア」という考え方

今年よく使われたマーケティング用語の1つに「トリプルメディア」というものがありました。

・ペイドメディア(Paid Media):「買う」メディア=いわゆる「媒体」
・オウンドメディア(Owned Media):「所有する」メディア=自社サイト(のメディア化/コミュニティ化)、顧客・会員など
・ソーシャルメディア(Social Media)※:ブログやtwitter,Facebookなど

※ここではSocial Mediaを「媒体」に近い意味で捉えていますが、自分の考えるSocial Mediaの定義は以下のようなものです。

それでは「ソーシャルメディア」における「メディア」は、上記のどちらにあたるでしょうか。そう、「コミュニケーションの媒介手段」の方なんです。決して「情報媒体」ではない。もっと言うと、「情報媒体」であるためには、(これも「メディア論」的になってきますが)幾つかの一定の機能を持たなければならない。例えば「A:速報性や独自性があり、一個人では入手できない情報を発信できること」、「B:世論を代表していること」、「C:権威ある正しい情報であること」など(これはまだ私見の段階なので、これから情報を集めていこうと思います)がそれにあたると思います。

【関連記事】
ソーシャルメディアに対する「誤解」とは(1)
ソーシャルメディアに対する「誤解」とは(2)



ここ最近、自分がWOMJという組織に所属しソーシャルメディアマーケティングに関する情報を集めていたり、現業でその領域の担当をしているからか、社内や社外でよく「ソーシャルメディアを使いたいんだけど、アドバイスが欲しい」と相談されるようになりました。ただ残念ながら、その最初の段階での動機は、「十分な広告コストがない」「話題喚起性がある(からクチコミが起こるはず)」「新しい試みをしたい」といったような、上記の自分の定義における「媒体」という側面でソーシャルメディアを捉えた場合の相談が多いなぁ、とまだ感じています。

そういった際、ご相談下さった方に必ず聞くようにしているのは、

「ソーシャルメディア」とは、「(主にオンラインの)ソーシャルメディアツール(≒CGM:Consumer Generated Media)を使っている人(や集団、“場”)」だけとは限らないでのでは??

という事です。


例えば、その商品やサービスが何かしらの会員制度を持っていて、その中に一定比率の「お得意様」がいる。もしくは「リアルで行っているサービス(各種のLiveやイベントなど)などで一定の集客ができている」とします。これらの人は、冒頭の「トリプルメディア」でいうと、「オウンドメディア」になります。

自分はここに「灯台下暗し」があると思っています。「コミュニケーションの媒介手段」としての意味でソーシャルメディアを考えた場合、その「メディア(=個人や集団、“場”)」が与えてくれるものは、
・商品やサービスに対する不満/改善要望/お褒めなどの意見
・商品やサービス利用者同士の意見交換(この場合は比較サイトなど第3者サイト上で行われますが)
・商品やサービスの(人間の自然な営みとしての)、日常生活やネット上でのクチコミ

だと思います。



さて。もうお気づきと思います。これって「ソーシャルメディアがもたらしてくれる恩恵」として、色々な所で書かれ、論じられている内容と同じなんです。

ではどうするか。答えは至ってシンプルです。まずは自分たちの顧客やメルマガ会員など(オウンドメディア)に対し、商品・サービスに関するアンケート調査を行い、その結果を商品・サービス開発にフィードバックしたり、場合によってはサイト上やニュースリリースなどで公に開示する※。もしくは彼らの顧客満足度を高める努力をする(会員インセンティブを与える、といった話に限らず、まずはお客様サポート体制を改善するなど)。
【※参考】
・お客さまのご意見に対する取り組み(ライフネット生命)
・トルノスお客様の声(トルノス)


つまり、「トリプルメディア」論における「オウンドメディア」の中には、(コミュニケーションの媒介手段)として捉えた場合の「ソーシャルメディア」を多分に内包しているんです。



よく「ソーシャルメディアは“魔法の杖”ではない」と言われます。これは全くその通りだと思います。特に「十分なマーケティング(広告)費用が無いから・・」といって「無料で使える」「自社商品・サービスの外にある」ソーシャルメディアによるマーケティングを検討されている方は、まず既に皆さんのもとに集まっている「オウンド・ソーシャルメディア」たる方々(お客様)との関係性の構築・強化から取り組んでみることをお勧めします。

加えて・・この場合のコミュニケーションの対象は「自社のお客様」なので、仮にクレームを頂いたとしても、それは「良いお客様」であり、外の世界のソーシャルメディアに踏み込んでいく際にどうしてもテイクしなければならない、万が一の“炎上リスク”とは大きく異なります。


※もちろんこの論は商品・サービスによっては当てはまらないかもしれません。ただ今年を通じて自分が一番強く感じたのがこの考え方であり、ひいてはこれは「お客様の声を聞く」という、極めてプリミティブな商いの基本にも通じる話だったりもするので、今年のまとめの1つとして、また今後の自身の検証課題の1つとして、ポストしておきます。



  
Posted by funkaholic at 08:11Comments(0)TrackBack(0)